【漏えいした情報】患者の氏名,性別,生年月日,住所,電話番号など.
【 漏えいまでの経緯】看護師は,診察室で患者の書類(紹介状)を預かったが,患者は処置のため,一旦診察室を出た.その後,看護師は患者の書類を誤って同じ診察室にいた別の患者に手渡した.手渡す際の患者の氏名などの読み上げ行為を怠っていた.翌日,患者が入院する際に,別の患者の書類を持っていることを発見し,誤交付に気づいた.
【 漏えい発覚後】看護師は,電話にて個人情報が漏えいした患者側へ謝罪を行った.
診療録の電子化は進んでいますが,患者さんに渡す書類のほとんどは 依然として「紙」です.そのため,毎日多くの紙文書を取り扱う現場では,本事例のような誤交付や誤配布による情報漏えいが発生するケースが少なくありません.ノートパソコンやUSBメモリの紛失,コンピュータウイルスやSNSによる情報漏えいといったデジタル系媒体にまつわる事故だけでなく,紙などのアナログ系媒体がもたらす情報漏えい事故にも注意が必要です.
アナログ系媒体は,デジタル系媒体と異なり,媒体自体に直接パスワードなどの保護をかけることができません.つまり,「誤交付・誤配布=漏えい」ということになります.
読む前に,まずは自分で本事例の問題点と,どうしたら防げたか考えてみてください.
【問題点】
●患者に氏名の確認をせず,書類を渡した
このようなケースは「よくあること」として考えがちですが,第三者の目に患者の情報が触れており,個人情報漏えい事故の一つであると認識しなければなりません.看護師は患者に書類を渡す際,一方的に渡しています.書類を渡す際には,患者本人に氏名を名乗ってもらい,本人であるかを確認してから渡す必要があります.また,同姓同名の患者もいるため,生年月日まで確認すれば,より誤交付を防ぐことができます.
【事故防止のためのポイント】
●患者に渡す前には患者と一緒に氏名などの確認を行う
●交付・配付の際にはダブルチェックを行う
さらに学びを深めてみましょう.
紙媒体にまつわる情報漏えい事故は,本事例の「誤交付」やCASE2の「FAXの誤送付」だけではありません.いくつか事例を紹介しておきます.
●裏紙の再利用が原因で!
裏紙の再利用が,個人情報の漏えいにつながった事例があります.裏紙の再利用は経済的ですが,個人情報が記載されていた場合,情報漏えいにつながることがあります.個人情報を含む書類は,再利用せず,適切に処分することが必要です.
●別人の書類が混入!
渡した書類の中に,本人以外の書類が紛れ込んでいた事例があります.「同時に複数人の書類を取り扱う」,「作業の中断」,「プリンタに放置(印刷物の取り忘れ)」といった行為が,このような書類の混入につながります. 渡す前の確認作業だけでなく,混入を防ぐための行動も必要です.
●風による飛散!
運搬中に書類が風で飛散しまった事例があります.紙には「風」という環境的な脅威が存在することも覚えておきましょう.
【事例の出典元】
伊東 朋子, 岡田 愛美, 品川 佳満 :あなたのリテラシーは大丈夫!?看護師が押さえておきたい患者の個人情報の取り扱い(Part 2)事例から考える患者の個人情報取り扱いのポイントと注意点,看護技術,64(11):1087-1093,2018.
更新日:2024.6.1