【漏えいした情報】患者の写真.
【漏えいまでの経緯】看護師は,患者の後ろ姿を携帯電話で撮影し,自らのSNSに無断で投稿した.投稿した記事は,仲間内でのやり取りのため「友達」だけに限定して公開していたつもりだったが,一時的に不特定多数に閲覧可能な状態になっていた.投稿には同僚からのコメントもあった.
【漏えい発覚までの経緯】SNSを見た第三者から病院へ患者の写真が載せられていると通報があり,病院が確認をとり,看護師の投稿したものであることがわかった.
【漏えい発覚後の対応と処分】書き込みを削除し,看護師とコメントを書き込んだ同僚看護師を厳重注意処分とした.また病院は,看護部長,看護師長も厳重注意した.
読む前に,まずは自分で本事例の問題点と,どうしたら防げたか考えてみてください.
【問題点】
●患者の写真を撮影した
看護師は,患者の写真を無断で撮影しています.この行動は,業務とは関係ない行動であり,正当な理由がなければ行ってはいけません.また,興味本位に患者の写真を撮る行為は,社会からの信頼を失うだけでなく,個人としての品格を下げることにもつながります.
●患者の写真をSNSに(無断で)投稿した
看護師は,患者の写真を無断で,SNSに投稿しています.本人は,後ろ姿であることや,「友達」だけに限定して公開しているという考えで投稿したかもしれませんが,これは,情報モラルに反する行為であり,状況によっては守秘義務違反や,プライバシーの侵害になる可能性もあります.たとえ個人が特定されにくく,友人限定であっても職場や患者の写真をインターネット上に載せてはいけません.
【事故防止のためのポイント】
●患者の写真を無断で撮らない
●患者の写真や情報をSNSなどに載せない
●私物の携帯電話(スマートフォン)を現場に持ち込まない
さらに学びを深めてみましょう.
本事例以外で,問題となった投稿について紹介しておきます.
●患者を誹謗中傷した投稿
看護師が「患者うるさい」などと投稿した.
●倫理観の欠く投稿
看護学生が臓器を撮影した写真とともに「グロ注意」といった投稿をした.
●電子カルテの画面を撮影して投稿
看護師が電子カルテをスマートフォンで撮影し,SNSに投稿した.
●職場の不満に関する投稿
看護師が職場の上司や同僚について「指導が厳しい」といった不満を投稿した.
※これら以外にも,「職場での業務内容に関する投稿」や「自分が看護職者であることがわかるような投稿」など,悪意のないものや,自己批判的な投稿も問題となることがあります.倫理綱領でも説明されていますが,公私の区別を明確にし,自己のプライバシーを守ることも必要です.
【事例の出典元】
伊東 朋子, 岡田 愛美, 品川 佳満 :あなたのリテラシーは大丈夫!?看護師が押さえておきたい患者の個人情報の取り扱い(Part 2)事例から考える患者の個人情報取り扱いのポイントと注意点,看護技術,64(11):1087-1093,2018.
【参考文献】
日本看護協会:看護職の倫理綱領.2021年3月.https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf
医療系学生による患者情報に関する事故の概要と対応 教育機関が把握しておくべき法的対応を中心として:橋本勇人・品川佳満,川崎医療短期大学紀要,33,49-54,2013.
更新日:2024.6.1